以前、著作権および著作者人格権についての以下の記事をアップいたしました。
その際、最後に
制作したマンガが、全くコチラが知らない第三者に無断改竄・無断使用されるといった事件が起こりました。けっこう大変な事態になってしまったので、詳細はまたこのブログでお話したいと思います…
と終わりましたが、今回はその「事件」について詳しくお伝えしようと思います。
事の始まり
詳しくお話する…とは言え、実際の関係者の氏名や団体名等は伏せて解説させていただきます。
その点、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
さて、事件が起こったのは2022年11月。
ある知人からDMが送られてきたことが始まりでした。
知人『ウチのポストに君が描いたと思われる広告マンガのチラシが入ってたよ』
という内容でした。
はて?直近で広告チラシのマンガ案件は無かったはずだけど…?と疑問に思いながら
その広告チラシの画像を送ってもらいました。
…確かに自分が描いたマンガに違いないのですが、よくよく見ると
そのマンガは別のクライアントさんに納品したマンガで、その広告を出した企業は
全然知らない企業で、しかもマンガのセリフ部分改竄に、イラスト部分も一部勝手に
変えれていたシロモノでした。
つまり、全然関係ない企業が、納品したマンガを勝手に使い、おまけにマンガの内容も
勝手に改竄した『盗用・無断使用』以外の何物でもない広告チラシだったのです。
その実物を見て僕はものすごく驚きました。…というかショックでした。
精魂込めて作ったマンガが全然知らない誰かに勝手使われ、勝手に改竄されていたのですから…。
ちなみに、クライアントに納品したマンガとは言え、マンガの著作権および著作者人格権は
僕が所有しています。そのことはクライアントも提示しております。
交わしているのは目的の範囲内だけで利用できるライセンス契約だけです。
著作者人格権はそもそも譲渡もできないので
盗用・無断使用・改竄はその時点でオールNGな行為なのです。
まずは事実確認
仮に、その盗用している広告チラシの企業を『H社』とします。
心情では今すぐその『H社』に怒鳴り込んでやりたかったですが、
まずは何が起こっているのか事実を確認することが先決です。
そのマンガを実際に使用していたのは『S』というWebサイトだったのですが、
僕の元に制作依頼をされたのはデザイナーの方でした。
まずはそのデザイナーさんに、現状を報告し、何かご存知かどうかお聞きしました。
もちろんデザイナーさんも寝耳に水で、『H社』の事も知らないとのことでした。
そもそも納品したマンガは、Webサイト『S』を運営する『F社』からの依頼だったそうで、
(この時点で大元のクライアントが判明する自体、ちょっとおかしいのですが😅)
『F社』に納品した際も、著作権および著作者人格権はクリエイターにあるとの説明も
されているとのことでした。
デザイナーさん自身、それ以外の事は分からないとのことなので、詳しいことは『F社』に
聞いてみれば?と言われましたが僕自身、『F社』とは取引はありませんし、
先方の責任者も分かりません。
そんな状態でいきなり『F社』に問い合わせるのは筋違いと思い、とりあえず今は
実際にマンガを盗用・無断使用している『H社』について調べることにしました。
情報収集開始
まずは検索で『H社』を調べることになりました。
広告チラシを撒いてるくらいなのでHPはすぐに判明しました。
驚くことに、そのHP上でも盗用したマンガを使用していました💦
しかし、いくらHPを調べても電話番号もありませんし、メールアドレスもありません。
一応住所は記載していましたが、調べるとどうもレンタルオフィスっぽく、
実際にはそこに存在していない様子でした。
更に調べていくと、本社(?)とは別に、全国各地に営業所が存在し、
『H社新宿』『H社足立区』とか、地区ごとにHPがあり、内容は全て同じですが
Twitterのアカウントも存在していて、もちろんTwitter上でもマンガを使用していました。
そのどの地区のHPでも直接的な連絡先は記載されていなかったので、
仕方なく問い合わせフォームから、貴社が僕のマンガを盗用・改竄・無断使用を
していることをこっちの連絡先やこっちに著作権がある証拠を含めて
送りました。
しかしすぐには返事は帰って来なく、ホントに届いているかも不明です。
念には念をと、Twitterの方からもアクセスをかけてみることにしました。
各地域ごとのアカウントにリプを通じて(DMは送れないように設定されてたので)
無断使用の事を忠告として送ったのですが、ほとんどのアカウントからは何の返事もありませんでした。
唯一、K地区のアカウントからアクションがありました。
そのK地区のアカウントに事情を説明すると、向こうも驚いたらしく、
詳しいことを聞きたいので、電話で直接話すことになりました。
『H社』の実態
K地区の方と電話で話すことになり、『H社』が一体何なのか教えてもらうことになりました。
どうも『H社』とは、営業商材というべきもので、セミナーを通して、フランチャイズを募り、
応募してきた人に営業権を販売して、各地域ごとで自身で営業してください…といったものでした。
その販売元は『L社』といい、川崎の人もこの『L社』から営業権と一緒に、販促ツールとして
マンガが載った広告チラシのデータと、HPを与えられたということでした。
なのでK地区の人もこのマンガが盗用・無断使用されているものとは知らなかたったので、
事実を知って大変驚かれている様子でした。
とりあえず大元の『L社』の存在が判明しました。
ではどうやって『L社』とコンタクトを取ろうか…と考えていると、
なんと『L社』の方から連絡が来ました。
どうやら問い合わせフォームから送ったメールがちゃんと届いていたみたいです。
その『L社』の社長さんと電話で話すことになりました。
『L社』の方でも、このマンガの著作権および著作者人格権がぼ僕にあることの
事実確認をしていたらしく、結果、確かに盗用・無断使用していることになると
認めてくれました。
しかし、ホントの事実はこのまた先に隠されていたのでした…。
本当の黒幕
ではなぜ、『L社』がこのマンガを盗用・無断使用することになったのか、
その経緯を社長さんの口から説明してもらうことになりました。
どうも『L社』は『H社』を展開するにあたり、販促用にマンガを使おうとなったわけなんですが、
そのマンガの制作を『F社』に依頼したというのです。
『F社』…もうお分かりですね。
マンガを実際に納品した大元のクライアントのあの『F社』です。
『F社』は『L社』から受けたマンガ制作の依頼を、自分たちの手元にある
マンガのデータを勝手に改竄し、新規のマンガデータとして『L社』に
転売していたのです。
『L社』からすれば、新規描き下ろしのマンガを発注したはずなのに、
渡されたマンガは盗用・改竄したものだったということです。
しかも『F社』はすでの倒産していて、『L社』社長曰く、
倒産前に売れそうなものは勝手に売って資金にしていたのではないかとの
憶測でした。
このマンガ確かに『F社』に納品したマンガになりますが、
直接的な契約は僕と交わしていませんし、もちろん
著作権および著作者人格権について譲渡や転売目的の権利も渡しておりません。
言うなれば、『L社』も知らなかった…ということになりますが、
自分たちが無断使用していた事実は確かなので、
今後『H社』関連でマンガの使用はしないし、今すぐ取り下げ、
更にはこれまで勝手に使用していた料金を支払うと先方自ら仰ってくれました。
とりあえず、誓約書を作成し、サインしてもらって、『L社』とのやり取りは
終了する運びになりました。
ちなみに詐欺行為に等しい『F社』に対しては『L社』の方から
偽計業務妨害として訴える所存とのことでした。
その先は知らぬが仏ということで関わらないようにしております。
最後に
事件が発覚し、解決に至るまで1週間位の時間で済んだのは
不幸中の幸いだったかもしれません。
この1週間、まるで探偵になったかのような感覚でしたw
まさか自分の身にこんなことが起こるなんて…と思いましたが、
著作権侵害は別段珍しいことではないのが実情です。
今回、先方の理解度もあって穏便・早急に解決できたのは良かったですが、
揉める時は数年単位で揉めることもざらにあると聞きます。
弁理士の方にも意見を伺ったのですが、著作権侵害を発見した場合、
とにかく先方にこちらの意思を伝えることが重要とのことでした。
今後、こういったことが二度と起こらないことを切に願う所存です。
ここまでご覧いただき誠にありがとうございました。
※画像の無断転載・使用・盗用はお止めください。発見した場合、法的手段を取らせて頂きます。